日本人の美意識

「きわめて鋭敏な美的感覚の持ち主であった清少納言は、

枕草子』のなかで、「なにもなにもちひさきものはみなうつくし」と断定して、

その例といて、ようやく這い出したばかりの赤ん坊や雀の子、

あるいはお雛様の道具などを挙げている。

また、理想的な美しさを体現しているとされる『源氏物語』の主人公は、

「きよらなる・・・みこ」と形容されている。

つまり、けがれないということで、いやなもの、

汚いもののない状態が日本人のびいきの重要な要素である。

このような「清らかさ」への憧れが、

余計なものを切り捨てたわび、さびなどの世界につながることは、

あらためて指摘するまでもないであろう。

このような美意識は、当然のことながら、日本人のものの見方、行動様式、価値観と密接に結びついている。


引用:「日本の美を語る」高階秀爾編著