円について 2
円らしき作品から、無限億の泉という円がモチーフの作品になる間、
私は自分の内部のイメージをずっと追いかけてきた。
そのイメージに重なるものを
学術書の記述からあとから読むと、
人の精神とはやはり深いところで
つながっているのだと、
また、無意識に生活の中で
さまざまなものを吸収して、
作品に現れているのだと
あらためて思う。
「円のシンボルは世界の多くの民族の間で
完璧、均質、分割不可能、無限運動などをあらわし、
普遍の円運動から天、太陽の循環などをイメージさせる。
円はまたとじられた回路であり、包みこむ形でもあることから
保護や防御の意味をもつことも、日本にかぎられない傾向である。
西欧の古代社会では、敵やさまよう魂、悪魔などが、町、寺院、墓にはいりこまないように
周辺に万里の紐を張りめぐらすことがあり、
格闘士は戦いをはじめるまえに自分の身体のまわりに円をえがいた。
指輪、腕輪、首飾り、帯、冠などが円形をとるのは、
一番敏感な、攻撃をうけやすい箇所を保護する呪術的な意図があった。
イスラム社会で、刺繍、勲章、お守り、建築の図案などに
円形のバラ模様がよく使われるのは疫病にたいする予防の意図がある。(「世界シンボル大事典」大修館書店)」
引用:諏訪春雄著 「日本人と遠近法」ちくま新書