+[ロマン派]ロマン主義と日本の美意識

イギリス・ロマン派の詩人キーツは、

「美しいものは永遠の喜び」と歌った。

「美しいもの」に接して喜びをかんじるというのは

誰にとっても身に覚えのあることであり、ごく自然の感情であろう。

だが何が「美しい」かということは、必ずしも万人にとって同じではない。


ロマン主義は、美とは決して万人にとって普遍的なものではなく、

それぞれの時代や民族に特有の美があると主張した。


画家であると同時に優れた思想家でもあったドラクロアは、

「美の多様性について」という評論において、

複数の美の世界があることを説いている。

ロマン主義の時代はまた異国趣味の時代でもあり、それまで知られていなかった新世界の発見がこのような「多様な美」の主張へとつながって行ったのであろう。

その後19世紀後半に日本が西洋の詩やのなかに入り込んだとき、

日本の美術が高く評価されて「ジャポニズム」と呼ばれる日本愛好熱を生み出したことも、

その流れのなかにあることは言うまでもない。(中略)

日本の美がそれまで西欧世界の知らなかった新しい美の原理を掲示したからにほかならなかった。


引用:「日本の美を語る」 高階秀爾編著